────翌朝 結局、昨日はなかなか寝付けなくて、夜な夜な下着や洋服選びをしていた。 なので、ほんの数時間しか眠れていない。 うさぎの下着は、ダメだから、レース使いが綺麗な淡いピンク色の上下セットをチョイス。 真っ白だと、なんだか中学生みたいだし、 一応持ってる黒もまだ私には早いのかも、 「ヒロさんも、こういうの喜ぶのかなあ?」 一応試着してみたが…… 「ダメだ! まだ色気が足りない」 特に胸が貧相である。 追々出して行く方が良いのかもしれない。 とりあえず、朝、シャワーを浴びて、下着を着替えた。 そう言えば、私が『スタイルも良くなくて、胸も小さいし……』って言った時、ヒロさんが、 『胸は、これからいくらでも俺が……ふふ何を言わせるんだよ』と言っていた。 あれは、どういう意味だったんだ? 胸って男の人が大きくしてくれるものなの? 「あ〜ダメだ! 気になったらすぐに検索しなきゃモヤモヤする!」 私は、また朝から検索していた。 「『ただ胸を揉むだけでは大きくなりません』 え、ダメじゃん! 『強く激しく揉むと、逆に脂肪が代謝され小さくなってしまうこともある』 は? コレ以上小さくなるのは、困るよ! 『バストの周りのリンパやデコルテを優しく丁寧にマッサージし、バストアップマッサージをする』 やっぱりマッサージが大事なんだね。 えっ、20代後半になると大きな成長を目指すのは、難しい? ヤダ前半のうちに急がないと!」 もし、激しく揉まれるようなことがあれば、注意してもらわないといけないと思った。 洗面台
──うわ〜〜ついに推しと付き合うことになったよ! あ〜〜いっぱいキスしちゃった。 凄く良かった、ヒロさんのキス。今でもまだあの感触が残っている感じがする。 ヒロさんが帰った途端、私は、今日のことを振り返って、恥ずかしくもあり、嬉しくもあり、1人でニヤニヤしてしまっていた。 「ホント今日は、一度に色んなことがあったなあ。あっ! 美香に報告しよ!」 「あ、待って! 美香に言っても良いのかなあ? 先にヒロさんに確認しなきゃ」 ヒロさんに、初めて個人メッセージを送った。 いつもは、会社のグループメッセージからだから。 今日のお礼を送って、 親友の美香にだけは、話しても良いかと確認すると、〈OK、良いよ〉と返って来た。 〈気をつけてね〉とバイバイの絵文字、ついでにキスマークのスタンプを送っておいた。 すると、ぎゅっと抱きしめ合っている可愛い熊のスタンプが返って来た。 「きゃ〜可愛い〜! こんなスタンプ使うんだ」 と思って嬉しくなった。 ──でも、なんだかエロい と1人ニヤける ただスタンプを送り合うだけなのに、もう楽しい。 「ふふ」 そして、早速 美香にメッセージを送った。 〈推しと付き合うことになりました♡〉 〈えーーーーーーーーーーーーーーー!〉 と、物凄く長い驚きをいただきました。 「ハハハハハッ、どんだけ長いのよ!」
「今ひまりは、きっと俺が物凄く多くの女性と付き合って来た! と思ってるんじゃないか?」 「うん、思ってる! それも大人の関係……」 と言うと、 「はあ〜そっか」とため息混じりに言うヒロさん。 「聞く?」 「うん、聞く! 聞きたい!」 すると、ヒロさんは、ゆっくりと話してくれた。 初めて付き合ったのは、中学2年生の頃だと。 本当に可愛いお付き合いで、同じ学年の違うクラスの女の子だったと。 「彼女の方から告白されて……」と微笑んでいる。 ──可愛い でも、まだその頃は、男友達と遊ぶことの方が楽しくて、彼女の居る男友達も少なくて、つい男同士で集まってバカなことばかりしていたんだと。 そのせいで、彼女のことを疎かにして、たまに 学校で会って「一緒に帰ろう」と言うと、 「自然消滅して別れたのかと思ってた」と言われたとか……一緒に帰るだけの関係。 「ふふ、可愛い」と思わず笑ってしまった。 だから、3ヶ月ほどで終わってしまったようだ。 中学生の頃って、女の子の方が少しオマセなところもあって、恋に憧れもあるし、好きな人とデートもしたいし、寂しがり屋だから連絡もなく放置されれば、そりゃあ自然消滅したのかと思ってしまう。 相手のことが分からなくて、不安しかないからね。私もそうだった。 「分かるような気がする! 私も同じようなことあったもん」と言うと、 「そうなのか?」 「うん」 「ひっで〜よな俺、ホントに」と反省しているもよう。 「ホントだよ!」 「ごめん」 「私に謝られても……ふふ」と笑い合う。 ヒロさんは、
マンションのエレベーターで、3階まで上がる。 「じゃあ、少しだけ待っててくださいね」 「了解〜」と右手を上げて、部屋の前の手摺りにもたれて待ってくれている田上さん。 私は、部屋に入って、慌ててうさぎちゃんたちをクローゼットに避難させるために籠に集めた。 「よくもこんなに集めたわね〜」 大きいぬいぐるみから小さいキーホルダーまで、気づけば30個ぐらいある。 これでも、一度売りに出したりして減らしたのだ。もう増やさないようにと気をつけているので、最近は購入しないようにしている。 毎日一緒に寝ている1番大きなうさぎだけは、クローゼットに入らないので、1つぐらいは良いだろうと、そのままベッドに置いておく。 そしてそして、問題は、 私の最も大切な〈田上大翔、限定アクスタ〉を どこに仕舞うかだ。 あちこち悩んで、やっぱりクローゼットの1番上が良いなと、椅子に登ってそっと置く。 なるべく奥に入れないと背の高い田上さんなら、前から見えてしまう。 「良し! コレで良いかな」 まだ、ココに住んで1年。うさぎ以外の物は少なめだ。 あとは、空気の入れ替えをして、部屋の散らかりをサッと整えて、田上さんを迎えた。 「お待たせしました」 「お、早かったな。お邪魔します」 「狭い所ですが、どうぞ」 ──うわ〜本当に推しが初来訪! まるで夢のようだ。 「おお〜シンプルで可愛い部屋だな」 「そうですか?」 ──頑張って、うさぎちゃんたちは、全部避難させましたからね。 「急に来たのに、この短時間で綺麗になってるということは、日頃から綺麗にしているからだよな」 物凄い分
「……」 突然の言葉に気が動転した。 というか、まだこの時点では、どういうことなのか? 私は理解出来ていなかった。 「ん? ダメ?」とちょっと自信なさげに聞いてくれている田上さん 「はい〜〜〜〜?」 私は、頭が混乱して何がなんだか意味が分からず、変な声を出してしまった。 「え? あの〜今、俺、渾身の告白をしたんだけど……」 とテーブルの向こう側で困った顔をしている田上さんが私を大きな目で見つめている。 そして、更に 「ん?」ともう一度優しく聞き直しながら、笑顔で私を見つめている。 ようやく私に言ってるのだと理解して、 「え〜〜〜〜〜〜!」と、 今日一番大きな声を出してしまった。 「あ、ごめんなさい」と思わず自分の口を両手で覆って、周りをキョロキョロ見たが、半個室なので、お隣りの席の方のお顔は見えない。 田上さんは、不思議そうに、 「ん? どういうこと?」と言っている。 「いやいやいやいや、それはこっちのセリフですよ! 田上さん彼女さんと別れたんですか?」と聞くと、 「え? 彼女? 誰の?」と言う。 「え、田上さんの!」と、私は右手の掌を上に向けて、『あなたですよ』と言わんばかりに、田上さんの前に右手を差し出した。 すると、 「なあ〜ひまり! なんだかさっきから、ずっとひまりは、俺に彼女が居る体で話してるみたいだけど、誰のこと? 俺、彼女なんて居ないよ」と言われた。 「え? 嘘! いつから?」 と、驚き過ぎてタメ口をきいてしまった。 「う〜ん、会社入ってからだから、丸3年かなあ?」 「え〜〜〜〜!」 噂は嘘だったんだという驚きで、 また、大きな声を出してしまったので、 慌てて自分の口を覆った。 この1年間は、いったい何だったのだろう。 「なあ、彼女って、一体誰のことを言ってるの?」 と聞かれたので、 「会社No.1美人秘書の……」と言うと、 「もしかして、山本 菜緒美のことか?」と言う田上さん。 確かそんなお名前だったなと思い、 「はい、おそらく」 と答えると…… 「グッ、ハハハハッ」と田上さんは、笑っている。 どうして笑っているのだろう? と不思議な顔で見ていると、 「あ、ごめん。それ、俺の姉貴」と言った。 「え〜〜〜〜っ!」 さすがに3度目ともなると田
会社のエレベーターの中で2人きり、私はそれだけでドキドキする。 「悪かったな、仕事してもらった上に待たせて」 「いえ、全然大丈夫ですよ」 思ったより、落ち着いて話せている。 「腹減った〜ひまり! イタメシ大丈夫?」 「はい、大好きです」 ──うわ〜田上さんとイタメシだなんて、最高過ぎるよ。たとえコレが最初で最後だとしても、きっと一生の思い出になるよ。 神様仏様ご先祖様、ありがとうございます。 私のニコニコは、止まらない。 そして、田上さんがタクシーを停めてくれたので、2人で乗り込んでお店へと向かった。 私は、どうしても1つ気になって仕方がなかった。 モヤモヤして、やっぱり聞かずには、居られなかった。 なので、思い切って聞いてみた。 「あのう〜」 「ん?」 ──うわ! 近っ! 田上さんがすぐ左隣りに座ってる〜 あ〜なんだか良い香りがする。 見つめられるとドキドキしてしまう。 長い時間、見つめ合うのは恥ずかしくて耐えられないので、一旦目線を外してから質問をした。 「私なんかと2人で食事に行っても大丈夫なんですか?」 全部言い終わるか否かで、もう一度目を合わせた。 「え? どうして? ダメなのか?」と、 田上さんは、上体を私の方に向けて座り直し、食い入るように大きな目で私を見つめている。 ──あ〜ダメだ〜それは反則だ。 「いえ……」 ──あ〜この先がやっぱり怖くて聞けない。 あの綺麗な彼女さんとのこと。 「あ、ごめん、ひまり彼氏居るのか?」 と、誤解をさせてしまったようだ。 「え? いえいえ、そんなの居ませんよ」と、また私は、両手をぶるぶるさせた。 ──どうして、そうなるの? 「そっか、なら良いよな」 と、なぜか下を向いて笑っている田上さん ──ん? 良いの? あなたの方が彼女に妬かれたりするのでは? え? とても寛大な女性なのかしら? 私ならたとえ部下だと分かっていても女性と2人キリでなんて食事に行って欲しくはないな。 それとも、まさか別れたの? いや、まさかだよね、そんな噂は全く聞かないんだけど…… かといって、今、いきなり『彼女は?』とは聞きにくい。 う〜ん、まだ楽しい食事も始まってもいないのに、 雰囲気を壊