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第5話 ヒロさんの過去恋愛

last update Last Updated: 2025-09-21 06:00:00

「今ひまりは、きっと俺が物凄く多くの女性と付き合って来た! と思ってるんじゃないか?」

「うん、思ってる! それも大人の関係……」

と言うと、

「はあ〜そっか」とため息混じりに言うヒロさん。

「聞く?」

「うん、聞く! 聞きたい!」

すると、ヒロさんは、ゆっくりと話してくれた。

初めて付き合ったのは、中学2年生の頃だと。

本当に可愛いお付き合いで、同じ学年の違うクラスの女の子だったと。

「彼女の方から告白されて……」と微笑んでいる。

──可愛い

でも、まだその頃は、男友達と遊ぶことの方が楽しくて、彼女の居る男友達も少なくて、つい男同士で集まってバカなことばかりしていたんだと。

そのせいで、彼女のことを疎かにして、たまに

学校で会って「一緒に帰ろう」と言うと、

「自然消滅して別れたのかと思ってた」と言われたとか……一緒に帰るだけの関係。

「ふふ、可愛い」と思わず笑ってしまった。

だから、3ヶ月ほどで終わってしまったようだ。

中学生の頃って、女の子の方が少しオマセなところもあって、恋に憧れもあるし、好きな人とデートもしたいし、寂しがり屋だから連絡もなく放置されれば、そりゃあ自然消滅したのかと思ってしまう。

相手のことが分からなくて、不安しかないからね。私もそうだった。

「分かるような気がする! 私も同じようなことあったもん」と言うと、

「そうなのか?」

「うん」

「ひっで〜よな俺、ホントに」と反省しているもよう。

「ホントだよ!」

「ごめん」

「私に謝られても……ふふ」と笑い合う。

ヒロさんは、その子がファーストキスのお相手だったもよう。初めてで、そっと重ねるだけの可愛いキスだったと言う。

中学生男子の頭の中なんて、そんなことでいっぱいだもの、と今なら分かる。

その後も短いサイクルでのお付き合いを繰り返していたようだ。全部お相手からの告白で。

──ちょっと妬ける

でも、中学3年生の受験を控えて、そんなことをしてる場合じゃない! と別れてからは、高校生になるまで彼女は作らなかったようだ。

──しかし、モテたんだなあ〜

そりゃあそうよね、私も一目惚れしちゃったんだし、とにかく優しいもの。

それに、私には頼りになる存在だから、つい頼りたくなるような人だから。私も頼られたら断れないし……

人柄? 人徳なのかなあ?

と、ジッと見つめてしまう。

「ん?」

「ううん」と笑顔で誤魔化す。

そして、高校生になった頃にも新しく彼女が出来たが、長くは続かなくて、同じように短期間でコロコロ変わっていたようだ。

「たくさん居たんだね〜」と言うと、

「う〜ん俺全然マメじゃないから、きっと相手は、つまらなかったんだろうな。だから続かなくて……」と言う。

でも、モテるから次から次へとお相手の方から告白されてお付き合いをしていたようだ。

そして、学年が上がった高校2年生の時、なんと元カノと今カノとヒロさんの3人が同じクラスになるという地獄絵図のようなことになってしまったようだ。

「バチが当たって拷問を受けたよ。地獄の1年間だった」と振り返る。

「ふふふふ」想像して思わず笑ってしまった。

他人事だから笑える。

「で、その新しい彼女とは?」

「結局、また短期間で別れたから、その後は元カノたちがタッグを組んで、俺が悪者」

「ふふふふ、本当にバチが当たったんだね」とヒロさんの頬をツン! と突いた。

苦笑いをしている。

「そういう人は、まだ彼女なんて作っちゃいけなかったんじゃないのかなあ?」

「だよな、反省してます」

「ふふ、でもモテるんだから仕方ないよね〜女の子たちが放っておかないもの」

と言うとニンマリ笑っている。

そして、高校を卒業して、春休みから大学生になる頃、同じ高校出身の1つ歳上のお姉様と。

やはり、卒業してからもお相手の方から告白されて、お付き合いすることになったようだ。

「もしかして、初体験のお相手?」と聞いてしまった。

「あ〜うん……」と少し照れながら答えた。

「そっか」

どうして聞いてしまったんだろう。

モヤモヤする。

歳上のお姉様と聞いたから、なんとなく、そう思ったんだ。

まあ、過去のことだし……

なんだか、ヒロさんとなら何でも話せてしまうような気がする。

しかし、なぜかその人から数ヶ月で別れを宣告されたようだ。

お相手から告白してきたのに、なぜだろうと思った。

「きっと俺が思っていたのと違ったんじゃないかな?」とヒロさんは言う。

「そうなんだ」

そこから大学へと進み、何度か声を掛けられて、

ご飯ぐらいならと行ったが、なんとなく皆んな違うかなと思って、食事止まりの人は何人か居たようだ。

「凄っ!」

「いや、だから女友達だよ」

「ふ〜ん」

──やっぱり妬ける、過去のことなのに……

そして、大学3年の時、サークルで知り合った1つ歳上の女性に、2年経ってから告白されて、お付き合いをしていたようだが、それに関しては、初めて半年ほど続いたのに、相手に浮気をされて別れたようだ。

「え? 可哀想」と頭をヨシヨシしてあげた。

「初めての屈辱、しかも、その浮気相手がなんと俺の友達」

「え〜! 最低だね、その女の人」

「別れて良かったよ」

「うん。そうだね。別れてくれたから、今私とお付き合い出来ることになったんだよね、感謝しなきゃね」

「そうだよな」とぎゅっと抱きしめられる。

「うん。しっかし、ヒロさんって、いつもモテてたんだね」と言うと、

「あ〜まあ、不自由はしなかったかな」と笑っている。

なんだか私は、その言葉で、過去の女性たちに嫉妬して、ヒロさんからスッと離れた。

「え〜! ひまり、なんで?」とヒロさんは慌てている。

「過去のことだし、ヒロさんがモテるのは、分かってるし、私が聞きたい! って言ったんだけど……

やっぱり私、ヤキモチ妬きだからね!」と宣言した。

「おお、そっか、妬いてくれてるのか? 嬉しい〜ぞ」と言って頬をくっ付けてスリスリする。

「う〜ん、もう!」

「アレ? これは嫌なの?」

「フン!」と後ろを向いて拗ねてしまった。

というより不安になってしまったのだ。物凄くモテる人だから、これからだって、と思うと……

「そっかそっか」と私の腕を掴んで引き寄せる。

そして、又ぎゅっとバックハグされた。

ホントはそれだけで、きゅんとして機嫌は直っていたが、私が何も喋らなかったから、怒っていると思っていたようで、

「ね〜ひまりちゃ〜ん、仲直りしよう! チューする?」と言って来た。

「ふふ」思わず笑ってしまった。

私の負けだ。

でも、せっかくのチューのお申し出だから、

顔だけ振り向くと、優しいキスをされた。

すぐに、ほだされている自分が居る。

「その人が最後の人?」と聞くと、

「うん、もうそれからは、ちょっとトラウマになって、自分から本気で好きになるまで誰とも付き合わないって決めてた」と言われた。

その言葉に嬉しくなった。

そう言えば、私には、ヒロさんから告白してくれた! と気づいたからだ。

今までずっとお相手からの告白でのお付き合いだったと知ったから。

「私?」と聞くと、

「そう、ひまり!」

凄く嬉しかった。それをどうしても、確認したかったんだと思った。

「毎日会う度に、どんどん好きになっていった」

と、指を絡めながら言うヒロさん。

「なら、もっと早く言ってくれれば良かったのに」

「あ〜一応さあ、同じ会社の同じ部署だし、失敗は許されないわけじゃないか?」

「あ、そっか、もし別れたりしたら……」

「そう! 慎重にもなるよ。だから、トラウマが取れて、この子となら大丈夫! と思えたらって、思ってたら1年かかった」と笑っている。

「え? でも、もし私が付き合わないって言ってたら?」

「どうだろ? それでも諦められなかったかもな、なんか分からないけど、どっかで変な自信を持ってて、ひまりじゃなきゃダメだ! って思った」

──そうなんだ、と嬉しかった。

「これから付き合っていって、もしもの時は?」

「もしもなんてない! 俺たちは、大丈夫だろ?」

「そうだけど、そんなの分からないじゃない」

「そりゃあ何があるか分からない。でも、俺から別れる! なんて言う選択肢はないから、もし別れるなら、ひまりが俺のことを嫌になった時だな」

そう言われて驚いたし、嬉しくもあった。

でも、複雑だった。

嬉しいような悲しいような……

なんだか泣きそうになった。

──私からあなたを手放すことなんてない

私もそう思っている。

でも……涙が溢れて来て、目にいっぱい涙をためて、後ろから抱きしめられているヒロさんの腕をぎゅっと掴んだ。

「ん? どうした?」

「私だって別れないよ」

「おお、それは嬉しい!」と言われると同時にヒロさんの腕に涙が1粒溢れ落ちた。

「え? ひまり、どうした?」

振りかえって、向き合った。

「ヤダよ!」とぎゅっとヒロさんを抱きしめた。

「あ、ごめんごめん、最初からそんな話は、よくなかったな、ごめん。大丈夫だよ、別れたりしないから」

「ウウウッ」

どうして、こんな話をしちゃったんだろう。

私だ! きっとまだ始まったばかりで、不安だからなのだろう。

「これから始めるんだから、もう前向きな話をしよう!」

「うん、ごめんなさい」

「ううん」

と、また頭を撫でてくれる。

「大好きだよ、ひまり!」と言われて

凄く嬉しかった。

「ウウウッ」と泣き笑い。

そして、ヒロさんは、黙ってキスをしてくれた。

──あ〜全身に染み渡る

癒されていく……

また、自分からぎゅっと抱きついた。

「嬉しい」と笑いながら、ぎゅっと抱きしめてくれるヒロさん

夢にまで見た光景

さっきまで、あんなに抵抗して、恥ずかしかったのに、今はもう既に離れたくないと思っている。

ヒロさんは、チラッと時計を見て、

「あ、もうこんな時間か、そろそろ帰らないとな」と言った。

「あ、うん」

急激に落ち込んで寂しくなってしまった。

「ひまり? もう泣くなよ」と、また頭をポンポンしてくれた。

「うん」

でも、ヒロさんと繋いだ手を離せないでいる。

離したくない。

それを察したのか、苦笑いをしている。

「あ〜じゃあ、ひまり明日予定あるか?」と聞かれて、

「ううん」と言うと、

「じゃあ、明日また会おう」と言われた。

「うん!」

急ににこやかに元気になった。

「ふふ、じゃあ明日10時頃に迎えに来るから、ちょっと付き合って!」と。

「うん、どこ行くの?」

「マンションの内覧」

「あ、そっか、部屋を探してるんだもんね? 分かった」

「じゃあ、また明日な」ともう一度キスをしてくれて、ぎゅっと抱きしめてくれた。

玄関までお見送り。

「じゃあな」と言うヒロさんの首に手を回して、私は大胆にももう一度キスをした。

「ひまり〜帰りたくなくなる」と言われた。

──帰らないで! 本当は帰って欲しくない

でも、ヒロさんは、私の為に我慢してくれてるんだし、自分の覚悟が出来た時には、ずっと朝まで居て欲しいと思う。

まだ始まったばかり!

出会ったその日のうちに結ばれるカップルも居る。

でも、私はこういう所が、お婆ちゃん子で古くさい考えを持っているのかもしれない。

···がどんなものかもわからないから、

少し怖いのかもしれない。

「ふふ、おやすみのチューだから」

「ふふ、じゃあな」と額にチュッとされて、

「おやすみ」

「おやすみ」

ようやく手を振った。

エレベーターまでは、少し距離があるので、ヒロさんが、『心配だから、もうココで良い!』と言って部屋の中に入るように言われた。

なので、私は見えなくなるまで、ドアの隙間から手を振った。

「あ〜あ、帰っちゃった」

と、大きなうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。

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